発達障がい者と農業

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発達障がい者と農業

NPO法人アスぺの会石川 副理事長
ウエルネスアカデミー理事長 前田泰一

2017/12/1


5年前に金沢市の中山間地区で農業法人を立ち上げ、ブルーベリー園や野菜・薬草作りをしています。

この農園は認定NPO法人アスぺの会石川の親御さん達の協力の下、発達障がい者の就労の場として始めました。 農業が発達障がい者に向いていると思ったからです。

発達障がい者の特徴は、社会性の障害と、コミュニケーション障害、想像力の障害とそれに基づく行動の障害にあります。

そのため就労しても職場になじめなかったり、二次障害を引き起こし鬱になったり、引きこもったりしてしまいます。

しかし、発達障がいに理解ある人たちが周りにいて農業をやればよい職場ができるのではと考えてきました。 5年間一緒に働いてきて彼らに対する認識の甘さを感じています。

農業はコミュニケーションをあまり必要としない職業だと思っていましたが、人がいればコミュニケーションは必ず必要です。 働く同僚たちと何らかのコミュニケーションをとらないと仕事は進みません。 細かいことでも作業に差しさわりが出てきます。

例えば、「スコップを持ってきて」と伝えれば健常人は持ってきてトラックの荷台におくなり周りのどこかに置いてくれます。 しかし、彼らは正確に場所を指定しなければスコップを持ったまま立ちすくんでいます。

あるいは音に敏感で車が好きな発達障がい者は、車が見えないところ・車の音が聞こえないところでないと作業ができません。 車が気になって仕方がないのです。 また不器用な人もいたりして細かい仕事には向いていない人もいます。

もちろん各自の障害の違いがあって違うのですが、各自に見合った仕事を割り振りできればよいのですが零細企業ではそうはいきません。 色々な仕事をこなさなければなりません。

そういう意味では農業は向いていないのかなと思いましたが、先日、障がい者の一人から
「僕は褒められたいのです」と言われました。

人から褒められることの少ない彼らが、野菜をきれいに洗ったり・ブルーベリー園をきれいに掃除ができたなど、仕事がよくできて褒められたときのうれしそうな顔。

これは忘れられません。

社会性に乏しかったりコミュニケーションが上手でなくても、仕事を通して社会に参加できる喜びを彼らと共に分かち合いたいと思っている日々です。