ライフスタイル・メディスンについて

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ライフスタイル・メディスンについて

ウエルネスアカデミー理事 宮﨑恭一
2017/6/1


今年(2017年)3月19日~22日に台湾台北市の、台湾アドベンチト病院において、アジア・ライフスタイル・メディスン協会(※1)主催の学術総会(※2)が開催されました。 アジア支部を立ち上げるための集会でもあったので、講師は米国、英国、オーストラリアをはじめ、フィリッピン、韓国、インド、マレーシア、インドネシア、日本から60名ほどの実践者が集まりました。(写真参照)

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医療の新しい動きを簡単にご紹介させていただきます。

米国で1863年に発足したセブンスデー・アドベンチスト教団(キリスト教プロテスタント)が提唱してきた、ライフスタイルが元気で長寿を約束するというエビデンスが1950年代に発表され、米国政府の援助で、今日でも研究が継続されています。男性で9年、女性で7年、一般のカリフォルニア住人と比較して長生きしているのです。2005年11月に発行された、ナショナル・ジェオグラフィック誌に掲載され、のちにブルーゾーン(※3)という本にもなって、長生きする生き方として紹介されています。

世界の先進国と言われている国々では、心臓病をはじめ、脳卒中、糖尿病、がんなどNCD(非感染性疾患)が蔓延しています。膨大な医療費もかかり、健康保険制度が破たんする状況となっています。医療者の関心は、薬や手術を繰り返しても減らない病気による犠牲者を救う方法に動いていきました。すでに1970年代からライフスタイルの改善で病気を治すことができないかという試行錯誤がなされてきました。多くの研究によって、遺伝による肉体の病気は約10%に過ぎず、90%はライフスタイルによるものであることも判明したのです。

2004年にアメリカン・ライフスタイル・メディスン大学(ACLM)(※4)が開校され、多くの医療従事者が再教育を受けています。ライフスタイル・メディスンを定義して、「ライフスタイルを治療方法として用い、植物性の全体食、運動、ストレス管理、禁酒・禁煙などを組み入れ、さらに慢性疾患に関して治療や予防、またはもとの体調にもどすために薬品を使わずに維持管理できるようにすること」と言っていますので、調理の仕方、毎日の運動、いら立ちや心配などのコントロールなど医学の分野では学んでこなかったライフスタイルそのものを見直しているのです。

2016年に日本語に翻訳されたコリン・キャンベル博士の「チャイナ・スタディー」の調査も大きく影響しています。すでに、韓国、フィリッピン、マレーシア、中国などライフスタイル・メディスン学会の支部ができています。日本ではこれからというところですが、多くの医師や医療従事者に関心を持ってほしいものです。来年はフィリピンで学術総会(※5)が開催されますので、興味ある方がおられましたら、ご案内できると思います。

脚注
(※1) Asia Society of Lifestyle Medicine (アジアライフスタイル・メディスン学会)
http://lifestylemedicineasia.org/
(※2)2017年度アジア太平洋ライフスタイル・メディスン学術総会(台湾)
http://lifestylemedicineasia.org/aslmconference2017
(※3)「ブルーゾーン」著者:Dan Buettner (米国ミネソタ州)、2010年12月25日発行、出版社:ディスカヴァー・トゥエンティーワン
(※4)アメリカン・カレッジ・オブ・ライフスタイル・メディスン(ACLM)
https://www.lifestylemedicine.org/
(※5)2018年度ライフスタイル・メディスン学術総会
http://lifestylemedicineasia.org/aslm-2018-manila