日本社会の大変動とウエルネス

wellness-columntop2.png

日本社会の大変動とウエルネス

名城大学副学長
ウエルネスアカデミー評議員 磯前秀二

2017/3/1


アメリカでトランプ大統領が登場しました。これまでの共和党選出の大統領とはだいぶ考え方の異なる方のようです。自由主義陣営に属するか、社会主義陣営に属するかで相手国への対応の仕方を質的に変えてきたこれまでのアメリカとは異なり、世界観や価値観よりもディール(取引)を重視する外交を展開しそうです。日本との2国間関係も例外ではないようです。日本は戦後70年を過ぎましたが、またまた厳しい時代を迎えそうです。日米関係だけでなく、天変地異や超高齢社会なども含めて考えると、戦後80年の日本はどうなっているのだろうと心配になります。

そこで思い出されるのが、以前気象庁長官をされていた高橋浩一郎博士が統計学の手法を用いて導いた日本社会大変動(ほぼ)80年周期説です。詳細については、高橋氏の著書である『生存の条件―21世紀の日本を予測する―』(毎日新聞社、1982年刊)をご一読ください。一流の気象学者で統計学に精通している高橋氏に、 ・・・、大坂夏の陣(1615)、・・・、大政奉還(1867)、第2次世界大戦における敗戦(1945)と列記されると、なるほどと思ってしまいます。2025年前後には何が起きるのでしょう。ところで、ほぼ80年周期をもたらす主因としては、太陽活動の周期や、巨大な水素ガス雲を伴い太陽活動に影響を及ぼすハレー彗星の公転周期など、さまざまなものが何人かの識者により仮説として提示されていますが、未だにはっきりしません。

AI(人工知能)研究の進展やロボットの社会の隅々への浸透などによってもたらされる新産業革命が迫るなか、将来への明るい見通しだけでなく、日本社会大変動への不安が募ります。文部科学省もこうした危機感をお持ちなのでしょう。平成19年の学校教育法改正で「確かな学力」観を打ち出しました。検討が進みつつある大学入試改革をはじめとする各種の教育改革も、このことを受けてのものです。「確かな学力」の構成要素は、「基礎的な知識及び技能」と「これらを活用して課題を解決するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力」と「主体的に学習に取り組む態度」です。簡単に言うと、知識と能力と態度です。能動的学習によってこれらを身に付けた人材を育成しなければ、日本は国際社会に伍していけないというわけです。

主体的に学び続け、成長し続け、社会に貢献し続ける人材でなければ、大変動する社会にしなやかに対応できず、また日本社会の発展もあり得ないという考えです。これまでの知識伝授を主とする教育ではいけないということになります。ところで、大変動する社会を主体的・能動的にしなやかに生き抜くとともに、社会発展に貢献できる人材は、いかなる状態にあらねばならないでしょうか。もちろん、輝くように生き生きした状態ではないでしょうか。つまりウエルネスです。ウエルネスなくして人材育成なし、ウエルネスなくして社会発展なしが、今後ますます強調されなければなりません。